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「クメール正月の話」

カンボジアのお正月にまつわる昔ばなしです。

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クメール正月はカンボジアの重要なお祭りで、4月の13日か14日から3日間行われます。

世代を超えて語り継がれる「何故クメール正月を祝うのか」というお話があります。

 
 

昔々、トムバル・コマールという若い男がおりました。
彼は通訳ができ、バラモン教、ヒンズー教の聖典、ヴェーダを素晴らしく理解が出来ました。

彼が7歳のとき、父は息子の為に大きな木の下にお寺を建てました。

沢山の種類の鳥が住む、土手にある木の下です。

トムバル・コマールには鳥の言葉がわかるという能力もあったのです。

彼の知識とその態度は、政や宗教的に、そしてすべての階層の人々にとって重要となりました。

 

トムバル・コマールの話を聞いた別の宗教的リーダーのカベル・モハ・プロム【四つの顔を持つ神】は、トムバル・コマールに3つの質問で勝負を挑みましました。

 

7日間の内に3つの質問の答えを見つけ出さなければ、彼の頭は切り落とされるというものです。

そしてもしトムバル・コマールが正しい答えを見つけ出したら、カベル・モハ・プロムが首を斬られるというものでした。

 

トムバル・コマールは数日間答えを見つけだそうと試みました。

しかし6日目に、3つの質問に答えることは出来ないだろうということを悟りました。

彼は死を恐れ、自暴自棄になり人生から逃げ出すことを決めました。

しかし幸運にもトムバル・コマールが木の下で休憩をしているときに、頭の上で鷲のつがいが何やら会話をしていました。

 

メスの鷲がオスの鷲に問いました。
「明日は何を食べらるんだい?」

「私たちは明日、トムバル・コマールの新鮮な肉にありつけるよ」

とオスの鷲が答えたのです。

 

「しかしどうして?」

とメスの鷲が尋ねました。

「なぜならトムバル・コマールは、カベル・モハ・プロムの3つの質問に答えることが出来ずに首を切り落とされるからだよ。」

とオスの鷲が答えました。

 

「3つの質問ってどんなものなの?」とメスの鷲が尋ねました。


するとオスの鷲は3つの質問をメスに説明しました。


つ目、『朝の人の幸せとはどこにあるか?』
>朝の人の幸せとは顔にあるんだ。だからみんな朝に顔を洗うんだ。


2つ目、『午後の人の幸せとはどこにあるか?』
>その答えは胸にある。だから午後に人は胸を洗うんだ。

(カンボジア人、特に農民はお昼時に暑さをぬぐうために胸を水で洗い、そしてお昼ご飯を取ります)。


3つ目、『夜の人の幸せはどこにあるか?』
>その答えは足にある。だからだからベットに行く前に足を洗うんだ。(すでにシャワーを浴びているが、寝る直前には足を洗います)

 

とオスの鷲は、3つの質問とその答えをメスに説明しました。 

その鷲たちの会話をだまって聞いていたトムバル・コマールは、

「これでカベル・モハ・プロムの質問に答えることができる!」と幸せな気分で寺に帰りました。


約束の七日目、カベル・モハ・プロムはトムバル・コマールから3つとも正しい答えを聞きました。

カベル・モハ・プロムは、トムバル・コマールの知識に驚きそして勝負のルールにのっとり自らの首を切り落とすことにしました。

彼は首切りの前に、彼の7人の娘に会いました。

「私のいう事をよく聞きなさい」とカベル・モハ・プロムは7人の娘に言いました。

私の首が切られてのち、首を大地へ投げればたちまち大地は燃え上がる。

 

もし首を空になげれば、嵐が来て、雨が降り、稲妻が走る。

 

もし首を海に投げれば、海はたちまち消えてなくなるだろう。

だから娘たちよ、私の首を金のトレイに置いてはくれまいか。

そういうと、自分自身で首を斬り、首を一番上の娘のトンサ・テビーに渡しました。

トンサ・テビーはトレイを右手に持ち、プレシュ・ソメル山の周りを他の姉妹たちと百万の天使たちを従えてセレモニーのように一時間歩きました。

 

そしてトンサ・テビーはチベットのカイラス山まで旅を続けたのです。

その後、天使たちは天国に帰りました。

そして毎年同じ日に、カベル・モハ・プロムの娘たちに扮した7人の女性は、首をトレイにのせてプレシュ・ソメル山の周りを行進するという行事になったということです。

​おわり

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