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​「プノンクラオム」

~ハヌマーンの投げた山~

​シェムリアップ州、トンレサップ湖畔にあるプノンクロン山のお話です

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ある日、将軍ハヌマーンはプレア・リアム王より任務を賜りました。 それはジャイアントビリープの矢で傷ついた王の弟プレア・リークの治療のために、薬の木を見つけてくるというものでした。

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ハヌマーンがまだサルだった頃から親しい友人だったプレア・リアム王は、あえてハヌマーンにその薬の木の名が『チョン・クロン・スワ』であるということを伝えませんでした。“スワ”とは猿という意味です。 プレア・リアム王は、ハヌマーンが「猿」という言葉を聞いてバカにされたと落胆し、薬の木を探しに行くことを辞めてしまうのではと心配したからです。

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ハヌマーンは当てずっぽうに薬の木を見つけ、プレア・リアム王の元に持ってきました。しかしそれは王様の求めた木ではありませんでした。

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さらにハヌマーンは他の薬の木を見つけ、再び王の元へ参りましたが二度目の木も王様の求めた薬の木ではなく、三度目も結果は同じでした。

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ハヌマーンはトロンバット山の上半分を切りとり、今度はプレア・リアム王自身に薬の木を見つけてもらうことにしました。

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プレア・リアムは「チョンクロンスワ」を見つけました。そしてハヌマーンは驚きました。なぜならチョン・クロン・スワはとても有名な薬草だったからです。

『これが王様が探していた薬の木なのですか?なんでこの木の名を言ってくれなかったんです?はじめから分かっていれば山の半分も持って来ることはなかったのに・・』と、うっかり口に出してしまいました。

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しばらくして弟のプレア・リークは無事回復しました。山はもはや必要ありません。王様はハヌマーンに山を元に戻してくるように言いました。

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山が元々あった場所はとても遠い場所です。そしてハヌマーンは怠惰な性格です。山半分を運命にまかせて適当に放り投げることに決めました。ハヌマーンは力いっぱいに山を放り投げました。

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そして山は上下が逆さまになって現在の場所へ。もともと山の頂上だった部分が下になり、ハヌマーンが切り取った山の中腹が新しく山の頂になり、「プノン・クラロム(プノン=山、クラオム=下)」と呼ばれるようになりました。

薬の木「チョン・クロン・スワ」は今でも山に自生していており、クルクメールというカンボジアの医者も、この山に薬の木を求めてやってきます。


 

おしまい

※この山はガイドブックや地図などで「プノン・クロム Phnom Krom 」と記述されていますが、正式な(伝統的な)発音で「ភ្នំក្រោម=Phnom Kraom」となり、

当絵本のタイトルではクロムではなく、クラオムと表記させていただきました。

【解説】
この物語に登場する猿の将軍ハヌマーンとは、ヒンドゥー教でおなじみの猿の神さまです。カンボジアはインドから移住してきた王族が起源とされており、昔ばなしの中にもインドの神様や伝承がよく登場します。
​ちなみにこのハヌマーンは、中国の「西遊記」の悟空のモデルになったとも言われています。

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『プノンクラオム』
山の奥には海のように大きなトンレサップ湖が広がります。

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