
事件の目撃者の記憶を元に、複数の写真で容疑者の顔を作るモンタージュ写真。
これを今回は“自分の記憶”を元に、あるカンボジア人の似顔絵を描いてみた。
名付けて『モンタージュ似顔絵』
年末年始で緩み切った脳ミソから抽出したのは、かつて「電波少年」の番組でカンボジアに9ヶ月滞在していたときに、撮影スタッフのドライバーをしていたコンチャ青年。
彼は、何人かいた現地人スタッフの中でも私と一番年齢が近く、とてもフレンドリーな人柄。カンボジア語も彼から教えてもらっていた。
もう20年以上前の話だが、顔を合わすたびに「イシゴ~ン(私のアダ名)」「ソックサバーイ テー(元気?)」と声をかけてくれていたのが印象に残っている。
なんで急に彼の似顔絵を描こうと思ったのか? たぶん年末にあったポイペト国境での火災のニュースがきっかけで、「ポイペト出身のコンチャ」に行きついたのかもしれないが、ともかく“なんとなく”彼を描こうと思った。
ちなみに私の元に、彼の写真は一枚もない。
番組の終了時、お世話になった現地スタッフの写真をたくさん撮っておけば良かったと後悔したが、番組を裏で支えてくれていた彼らの写真はほんのわずかで、コンチャの姿は私の記憶の中にしかなかった。
そういった事も「描くぞ!」とペンを取るキッカケになったのかもしれない。
静かに目を閉じて、瞑想のような状態でかつての記憶を呼び覚ます。
暗闇の中に、次第に浮かび上がってきたコンチャのなつかしい顔。
目を開けて、その輪郭を忘れないうちにササッっとペンを走らせる。
これが思いのほか大変な時間のかかる作業だった。
記憶の掘り起こしもさることながら、ペンを操って描くほうが難儀で、何度もトライ&エラーを繰り返す。そして徐々に納得のいくコンチャの絵が出来上がって行った。
この作業をやっていて気付いたのが、これ、かなり良い脳トレになっている!?という事。日頃ぜんぜん使っていなかった脳ミソの部位を久々に使ってる良いうずきもあった。
記憶の中という曖昧な映像を、描いては消して、消しては描いての繰り返しの中で、やがてカチリと腑に落ちてくる気持ちいい瞬間がやってくる。
目の大きさ、目の離れ具合、カチリ!
眉毛の角度、口角のバランス、カチリ!
ほっぺたの膨らみ具合、髪型、、色々な部位でカチリの連続。
おそらく脳内では幸せホルモンのエンドルフィンがどばどば出ていた事だろう。
「そうそうこんな感じ」とひとり合点し、不二家のペコちゃんよろしく、ペンを片手に何度も頭を揺らしていた。
という事で、年末のもてあました時間に始まった「記憶のモンタージュ似顔絵」
コンチャという青年をはじめ、その背景にあった些細な出来事も思い出すことができ、かなりの青春プレイバックになった。
皆さんも幼少期や思い出の地や、初恋や印象に残っている人など、なんとなく思い浮かんだ映像のアウトプットを悩トレがてらやって頂けたらと思う。
絵に自信がなくても、なんとか描き出そうともがく行為が脳トレ的には良いかもしれない。
ちなみに今回描いたコンチャ青年は、電波少年の撮影が終了してから数年後、マラリアかデング熱にかかって亡くなってしまった。20代半ばで逝ってしまったコンチャは私のような40代の中年になることはなかった。
今回「なんとなく」で彼を描きこのブログで紹介したが、年末年始にあっちの世界からコンチャがひょっこり来ていたのかもしれない。
END

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