巨石の山の伝説│カンボジア昔話│一般社団法人ホワイトベース
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「クロンヨン」

​~クルン族の話

​ラタナキリ州の山岳民族クルン族に伝わるの話です。

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むかしむかし、ラタナキリ州のクルン族が暮らす山岳にストーンフィールドと呼ばれる、ふしぎな平らな石の一帯がありました。ジャングルの中でそこだけ木々が生えず、開けているのです。

そのストーンフィールドの近くの洞窟に、クロン・ヨン(Krong Yong)と呼ばれるこの地の長が暮らしていました。彼の暮らす洞窟は小河の水が流れ込み、寝室には石のベッドがありました。

また彼は不思議な霊力を持っており、雨や風、雲や太陽を自在に操り天気を変えることができました。

クロン・ヨンはあらゆる物を洞窟に持っていました。

クルン族の人たちは、皿やつぼ、狩猟の道具やお祭りの楽器などが必要なときはクロン・ヨンの所に借りに来ていました。

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そしてクルンの男女が結婚した時はハネムーンとして、クロン・ヨンの部屋に7日間泊まりに来るというしきたりがありました。

新郎新婦の両親は7日分の食料をもたせ、新婚の二人はここで寝食を共にするのです。

その間クロン・ヨンはどこか別のところで過ごします。

 

時が流れ、クロン・ヨンは老齢で他界しました。

クルンの人たちは死者を火葬にするのですが、不思議なことにクロン・ヨンの体はいくら薪をくべても上半身が焼けずに残ってしまいます。

これも彼の体に残る霊力のせいなのでしょうか?

さらに3日間火をたやさずにしてやっとクロン・ヨンの火葬を終わらせることが出来ました。

クロン・ヨンはもういません。

これまで度々クロン・ヨンのところに必要なものを借りに来ていた村人たちは、次第に借りたものを洞窟に返しに来なくなり、ついには洞窟の物は一切なくなってしまいました。


またある時、プレイボーイの男が婚姻関係にない女を洞窟に連れ込み、いやらしいコトをしていました。

クロン・ヨンは霊となってこうした状況を見ていました。

こうした村人の秩序の崩壊に強く憤り、突然石の洞窟の天井を落としてしまいました。


現在もストーンフィールドや崩壊した洞窟はバンルンの北10KMのところに存在します。クロン・ヨンの霊もそこに息づいているかもしれません。

​おわり

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